勤務医のままでいいのかと考えたとき

医師として働いていると、ある時期から「このまま勤務医を続けるのか」と考える瞬間が訪れます。
それは必ずしも不満からではありません。
日々の診療に追われながら、ふと立ち止まる瞬間。
当直明け、外来が終わった後、夜の帰り道。
「自分はこの先、どんな医師として働くのか」という問いが、静かに浮かんでくる。そういう瞬間のことです。

この記事では、その問いを整理するための視点をまとめます。
開業を勧めるわけでも、勤務医を続けることを否定するわけでもありません。ただ、考えるための材料を一緒に並べていきます。

目次

勤務医という働き方の現実

勤務医の平均年収は約1,480万円(医療経済実態調査)。高収入の職業であることは間違いありません。
設備の整った病院環境、チーム医療の中で専門性を磨ける環境。勤務医であることの強みは、たしかにあります。

一方で、医師の4割が週60時間以上にわたって働き、約8割が「何らかのヒヤリ・ハット体験がある」という調査結果もあります。
当直・オンコール・過重労働。「安定している」と言われる働き方の中に、じわじわと積み重なる疲弊があることも現実です。

勤務医を続けるメリット

診療に集中できる

経営・資金繰り・スタッフ管理は、病院組織が担います。
医師としての本分である診療に、時間とエネルギーを集中できる環境は、勤務医の明確な強みです。

設備と症例が揃っている

高度な検査機器・手術室・多職種チーム。
大病院ならではの環境で、専門医としてのスキルを継続的に磨けます。希少な症例・難易度の高いケースに関わり続けられるのも、基幹病院勤務の特権です。

収入が安定している

給与という形で毎月一定の収入が保証される。
開業医のように診療報酬の入金を待つ必要もなく、運転資金の心配もない。
この安定感は、特に子育て・住宅ローンなどの支出が重なる時期には大きな意味を持ちます。

それでも「このままでいいのか」と思う理由

「勤務医は昔の携帯でいうパケ放題だが、開業医は頑張った分だけ報われる」という言葉が、ある医師のアンケート回答にありました。端的ですが、多くの勤務医が感じている感覚を突いています。

働いても働いても、収入の上限は組織が決める。ポジションは年功序列と医局の事情で動く。診療方針も、病院の方針が優先される。

キャリアを見直す瞬間が訪れるのは、不満があるからだけではありません。
「もっと自分らしく働けるのではないか」という感覚。それ自体は、医師としての成熟のサインでもあります。

「開業」以外の選択肢も含めて考える

勤務医のままでいいのかという問いは、「開業するか否か」という二択ではありません。

整理すべき選択肢は、いくつかあります。
転職して環境を変える。
専門を深めて別の病院へ移る。
非常勤・フリーランスとして働き方を変える。
訪問診療・在宅医療に軸を移す。
そして、開業する。

「開業前の準備をしたい。そのために必要な診療スキルを維持したい」という声もあります
。開業を目標に置きながら、今の勤務を「準備期間」として捉え直すという視点も、一つの整理の仕方です。

年収だけで比べると見えなくなるもの

開業医の損益差額は約2,600万円と言われます。勤務医平均の約1,480万円と比較すると、数字の差は大きい。
ただし、開業医の手取りは額面の50〜60%程度。借入返済・固定費・人件費を差し引いた後の実質額です。

収入の多寡だけで「開業すべきか」を判断するのは、少し雑です。
大切なのは、「どんな医師として、どんな生活を送りたいか」という問いに、自分なりの答えを持てているかどうかです。

まとめ

勤務医という働き方には、安定・設備・専門性という明確な強みがあります。同時に、過重労働・裁量の制限・収入の上限という現実もある。

「このままでいいのか」という問いに、正解はありません。
ただ、その問いが浮かんだこと自体が、自分のキャリアを見直すタイミングのサインかもしれません。

開業するかどうかは、その後に考えれば十分です。まずは、自分が何を大切にしているかを、少し整理してみてください。


私自身、多くの医師の開業に立ち会ってきました。うまくいった開業に共通していたのは、スピードではなく、納得感でした。焦らず、ここで少し整理していってください。

この記事の延長にある話を、3つだけ。

次に読むなら、このあたり

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この記事を書いた人

元医療施設設計士/医療事業プランナー

クリニックをはじめとする医療施設の設計を20年以上担当。
小児科・耳鼻咽喉科・皮膚科など、
子どもが通う医療施設の設計に特に力を入れてきた。

現在は設計を離れ、医療系企業の事業プランニングに従事。
「先を不安に思う医師の力に少しでもなれれば」という思いで
このサイトを運営している。

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