内科は、クリニック開業の中でもっとも一般的な診療科のひとつです。
一方で、内科はクリニック数も多く、立地や競合によって結果が大きく変わります。
「内科なら安定する」という印象を持つ医師もいますが、長く現場を見てきて感じるのは、内科こそ「どこで・どう開業するか」の設計が成否を分けるということです。
この記事では、内科開業の立地・患者数・収益構造を、数字と実例を交えて整理します。
内科開業の特徴
内科は、地域医療の中心となる診療科です。 風邪・生活習慣病・慢性疾患の管理など、日常的な診療が多く、患者との長期的な関係が収益の安定につながります。
内科の強みは、定期通院患者の積み上げです。
高血圧・糖尿病・脂質異常症などの慢性疾患患者は、月1〜2回のペースで来院し続けます。
こうした患者が100〜200人定着すると、売上の土台が安定してきます。
一方で弱点もあります。
保険診療中心のため患者単価は低く、売上を積み上げるには一定の患者数が必要です。
また、競合が多い診療科でもあるため、立地と差別化の設計が重要になります。
内科に向いている立地
生活動線との相性が最重要
内科クリニックに向いている立地は、患者の日常生活の動線上にある場所です。
駅前よりも、住宅地の中・スーパーや薬局の近く・バス路線沿いなど、「ついでに寄れる」場所のほうが通院が続きやすい傾向があります。
特に高齢者の多い地域では、車を使わず徒歩や自転車で来られる立地が重要です。
「来やすい」より「通い続けやすい」が、内科立地の判断軸です。
高齢者人口との相性
内科の主な患者層は50〜70代以上です。
診療圏調査では総人口だけでなく、65歳以上の人口比率と将来推計を必ず確認してください。
高齢者比率が25%以上の地域では、慢性疾患の潜在患者が厚い傾向があります。
逆に新興住宅地や若年層が多い地域では、患者数が安定するまでに時間がかかることがあります。
患者数と収益構造
患者数の目安
内科クリニックの患者数は、1日30〜60人が一般的な運営レンジです。
1日30人であれば月約600〜700人、年間では7,000〜8,000人前後。
保険診療の患者単価は診療内容によりますが、おおよそ3,000〜5,000円前後が目安とされています。
1日30人・単価4,000円で計算すると、月の売上はおおよそ720万円前後。 ここから固定費(月175〜310万円前後)を引いた額が手元に残ります。
ただし開業直後は患者数が少ない時期が続きます。
多くのクリニックで軌道に乗り始めるのは、開業から1〜2年後です。
その間も固定費は変わらず出ていくため、半年〜1年分の運転資金を確保しておくことが大切です。
収益の分かれ目
内科の収益を左右する大きな要因は、慢性疾患患者の定着率です。
定期通院患者が200人いるクリニックと、100人しかいないクリニックでは、売上の安定性が大きく違います。
「新患を増やす努力」と同時に、「来てくれた患者に通い続けてもらえるか」を考えることが、内科経営の核心です。
ある内科クリニックの院長は、開業2年目から在宅医療を少しずつ始めました。
「外来だけでは売上の波が大きかった。在宅が加わることで、収入が安定してきた」と話しています。 診療スタイルの設計が、収益構造に直結します。
競合の見方
内科はクリニック数が多い診療科です。 ただし、競合の多さが即座に不利につながるわけではありません。
見るべきは競合の「強さと空白」です。
近隣クリニックの口コミを確認すると、「待ち時間が長い」「予約が取りにくい」「先生の説明が短い」という声が多いことがあります。
そこに「予約制・待ち時間の短さ・丁寧な説明」を強みとして入れると、差別化が成立しやすくなります。
競合が多い地域は、医療需要が高い地域でもあります。
「競合が多いから難しい」ではなく、「自分が入る余地があるか」を見ること。 その視点で競合を分析すると、判断が変わります。
まとめ
内科開業では、立地・患者数・収益構造の3つが密接につながっています。
生活動線上にある立地を選び、高齢者人口との相性を確認する。 1日の患者数と単価から売上をざっくり試算し、固定費との比率を見る。
競合の数ではなく強さと空白を見て、自分が入る余地を探す。
この順番で考えると、内科開業の「成立する形」が見えてきます。
私自身、多くの医師の開業に立ち会ってきました。うまくいった開業に共通していたのは、スピードではなく、納得感でした。焦らず、ここで少し整理していってください。
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