開業するなら何歳まで?タイミングと年齢の現実

「あと数年、経験を積んでから」「子どもが大きくなったら」。
開業を考える医師のほとんどが、一度はそう口にします。それ自体は間違いではありません。
ただ、年齢と開業にはいくつかの「現実的な制約」があります。
焦らせるつもりはありませんが、知っておくと判断が変わる話です。

目次

開業医の平均年齢は41.3歳

クリニックを新規開業する医師の平均年齢は41.3歳です(日本医師会、2009年調査)。現場でも、30代後半から40代前半に開業を決断する医師が多い印象です。
「経験も積んだ。自己資金もある程度できた。あとは決断だけ」というタイミングが、ちょうどその年代と重なります。

年齢と借入返済期間の関係

開業に必要な資金は5,000万〜1億円が目安です。多くの場合、金融機関からの融資が必要になります。

ここで関わってくるのが「返済期間」です。借入金の返済期間は10年〜20年が一般的であり、金融機関は65歳ぐらいに返済が終わると見込んで貸し出します。
それを踏まえると45歳くらいまでには決断したいところです。

つまり、45歳を過ぎてから融資を申し込むと、返済期間が20年取れなくなります。
融資額が抑えられたり、毎月の返済額が大きくなったりして、資金計画が窮屈になる。
「いつでも開業できる」は正確ではなく、「融資が通りやすい期間」には限りがあります。

年代別に見る、開業の現実

30代前半〜半ば

臨床経験はまだ浅い時期です。ただ、早い段階から収入増を享受できる点と、ローンの返済期間を長く取れる点が最大のメリットです。体力や柔軟性が高く、新しいことに挑戦しやすい世代でもあります。
自己資金が少なくても、将来性を評価されて融資が通るケースもあります。
「早く始めたぶん、早く軌道に乗せる時間がある」という発想で開業する医師が増えています。

40代前後

臨床経験や専門医資格が整い、資金面でも準備がしやすいため、開業にもっともバランスの取れた世代と言えます。
ただし、子どもの教育費・住宅ローンと開業資金の時期が重なりやすい。「資金はあるが、家庭の支出のピークとぶつかる」という悩みが多い年代でもあります。
意思決定を先送りにしていると、45歳という一つの目安をいつのまにか過ぎてしまうことも。

50代以降

開業そのものは可能です。50代で開業する場合、経験や知識が豊富で信頼性が高い反面、年齢が上がると働ける期間が短くなり、融資の審査も厳しくなります。
初期投資を抑える工夫が必要です。大規模な設備投資を伴う開業より、訪問診療・心療内科・小規模クリニックなど、初期費用を抑えられる形態と相性が良い年代です。

「遅すぎる開業」が生むリスク

年齢が上がるほど、開業後に経営が軌道に乗るまでの時間的余裕が少なくなります。開業初年度は患者数が安定せず、運転資金が最も消耗する時期です。開業から黒字化まで1〜3年かかることも珍しくありません。
そこから借入を返済し、老後資金を積み立て、後継者問題まで考えると、開業は早いほど選択肢が広がります。

ちなみに、開業医の引退予定年齢の平均は73.1歳、最頻値は75歳です。70歳以上で開業医を続ける医師の割合は21.8%に達します。
開業医に定年はありません。「いつまで働けるか」より、「いつ始めるか」が問われます。

開業を考え始めたなら「準備の12〜18ヶ月」を意識する

開業を決意してから実際に診察を始めるまで、12〜18ヶ月かかります。
物件探し・設計・工事・スタッフ採用・各種申請、それぞれに時間がかかる。
「そろそろ真剣に考えよう」と思った瞬間が、準備のスタートラインです。


私自身、多くの医師の開業に立ち会ってきました。うまくいった開業に共通していたのは、スピードではなく、納得感でした。焦らず、ここで少し整理していってください。

この記事の延長にある話を、3つだけ。

次に読むなら、このあたり

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この記事を書いた人

元医療施設設計士/医療事業プランナー

クリニックをはじめとする医療施設の設計を20年以上担当。
小児科・耳鼻咽喉科・皮膚科など、
子どもが通う医療施設の設計に特に力を入れてきた。

現在は設計を離れ、医療系企業の事業プランニングに従事。
「先を不安に思う医師の力に少しでもなれれば」という思いで
このサイトを運営している。

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